第173章 彼女を抑えられない

御堂怜央は、言葉を失った。

「……は?」

坂井礼司は答えない。ただ、怜央を見据える。

重くもない視線。それなのに、背筋がぞくりと冷えた。

「ありえない」怜央は首を振った。「でたらめ言うな! 親父がそんな――」

「本人に聞けばいい」礼司が遮る。「でも今は出ていってくれ。ここは俺の家だ」

怜央は礼司を見て、それから江島結奈へ視線を移した。

結奈の頭には、まだ花冠が残っていた。淡い桃色の輪が、眉と目元を柔らかく縁取っている。いつもの氷みたいな雰囲気とは、別人みたいに。

――なのに、目だけは冷たい。

怜央を見るその眼差しは、まるで赤の他人に向けるものだった。

「江島結奈……」声が...

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