第30章 血で床を汚すな

両手は拘束ベルトで固定されていた。右手首は骨折していて、ベルトがちょうど折れた箇所を締め上げる。そこへ、別種の激痛が上乗せされた。

口には開口器を噛まされ、顎は閉じられない。唾液が勝手にあふれ、頬を伝って落ちていく。

麻酔なし。鎮痛ポンプもなし。

あるのは冷え切った胃カメラの軟らかいチューブだけ。医師が震える指先で、それを彼女の口腔から、ゆっくりと食道へ押し込んでいく。

「ん゛……お゛えっ……!」

強烈な異物感と咽頭反射で、御堂結奈は激しくえずいた。身体が反射的に跳ね、涙が滝のように溢れる。だが拘束は容赦なく、逃げ場はない。

カメラの先端が食道を滑り降り、ついに胃へ――。

高精...

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