第36章 彼女に借りたものは命になるだろう

男は濡れたハンカチを握るなり、背後から一気に御堂結奈の口と鼻を塞いだ。

御堂結奈の身体が、ぴたりと固まる。声はほとんど出ない。かすかに二度ほどもがいたきり、力が抜けて、そのまま後ろへ崩れた。

男は落ちてくる身体を慣れた手つきで受け止めると、周囲をきょろきょろと警戒して見回し、意識のない御堂結奈を半ば引きずり、半ば抱えたまま廊下の突き当たりへ急いだ。――御堂斗真の寝室がある方向だ。

そして二人は、監視カメラの画角の端へ溶けるように消えた。

映像は、そこで唐突に途切れる。

以降の記録は丸ごと消されているか、あるいは無関係のカメラに切り替えられていた。

だが、この十数秒だけで十分だった...

ログインして続きを読む