第39章 少なくとも君を生かして手術室に入れる

何年も前――彼がまだ医大生だった頃。ふたりは慈善イベントで知り合った。

御堂結奈は江島家の蝶よ花よと育てられたお嬢様で、当時の彼女は笑みが澄んでいて、瞳もまっすぐで、彼のことを「正彦さん」と呼んだ。

その後、彼は海外へ渡って研鑽を積み、連絡はいつしか途切れた。彼女の名を再び耳にしたのは、世間を騒がせた数々の醜聞と、御堂家との婚約の報せだった。

まさか再会が、こんな地獄の光景になるなんて――考えたこともなかった。

「結奈、起きろ。俺だ、永橋正彦だ」

包帯だらけで骨ばった手を握りしめ、掌の熱を押し込むように力を込める。少しでも温もりと、少しでも生きる力を渡したかった。

呼び慣れた名の...

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