第44章 危篤

彼女の目は最初、虚ろに宙を漂っていた。けれど長い沈黙ののち、ようやく焦点が合い――ベッド脇にいる、憔悴しきって老け込み、涙でぐしゃぐしゃの女の顔を捉える。

「……お母さん……?」

干からびた唇の隙間から漏れたのは、掠れてほとんど聞き取れない息の音だった。

「結奈! そうよ! お母さんよ、お母さんはここよ!」

江島千代は堪えきれないほど取り乱し、結奈の――拘束されていないほうの手を、ぎゅっと握りしめた。氷みたいに冷たく、骨ばかりが浮いたその手に、胸がきりきりと締めつけられる。

言いたいことは山ほどあった。どうしてこんな姿になったのか、何があったのか、どれほど会いたかったのか――。けれ...

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