第54章 江島千代に事件が起きる

ボディーガードが鉄門を押し開けて、なだれ込んだ。

目に飛び込んできた光景に、修羅場慣れしている連中でさえ息を呑む。

床には、くねるように続く血の筋。踏み荒らされた血の足跡が、あちこちに散っている。

壁際には御堂結奈が――血に塗れた人形みたいに凭れかかっていた。胸元には、肉が裂けて抉れた十字の傷。そこから、とくとく、とめどなく血が溢れている。顔色は透けるほど白く、焦点の合わない瞳が宙を漂っていた。かろうじて胸が、微かに上下している。それだけが、生きている証だった。

一方で男たちは檻の隅に縮こまり、顔面蒼白のまま震えている。

ボディーガードは即座に無線へ怒鳴った。

すでに車を出す準備...

ログインして続きを読む