第56章 彼女は死なない

グシャッ。

御堂斗真の指に挟まれていた火のついていない煙草が、一瞬で握り潰された。刻まれた葉が、はらはらと指の隙間からこぼれ落ちる。

身体が、ほんのわずか揺れた。顔色は紙みたいに白くなり、唇からも血の気が消える。

――動画が……偽物?

誰かが……わざと捏造して、御堂結奈を陥れた?

じゃあ、彼女は本当に――俺を裏切っていなかったのか。

冷たいものが心臓に絡みつき、次の瞬間、押し寄せる恐慌が彼を飲み込もうとした。

ありえない……。

御堂斗真は、ガラス越しに手術室の様子を確かめることすらできなかった。

彼はいきなり秘書の襟首を掴み、血走った目で睨み据える。

「本当か?! 買収さ...

ログインして続きを読む