第85章 斗真はなぜ飛び降りたのか?

御堂斗真は身体が鉛のように重く、意識も半分ほどしか浮上していない。そのせいで、彼女の命知らずの勢いに足元をさらわれた。

「お前……何を……」

掠れた声。焦点の定まらない目。

江島結奈は答えない。瞳の奥にあるのは、決意の炎だけ。

急がなければならない。――誰かが「現場」を押さえに来る前に、この罠そのものを叩き壊す。

肩で押し、足を引っかけ、ほとんど相討ちのような勢いで、江島結奈は御堂斗真をベランダの縁へ追い詰めた。

二階は高くない。下には、手入れの行き届いた植え込み。

落ちても、まず死にはしない。だが騒ぎにはなる。怪我もする。今夜の「不貞」の筋書きは、完全に別物になる。

「落ち...

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