第86章 真心など一度もない

その言葉は情に厚く、筋も通っていて、付け入る隙がなかった。

江島結奈に腕を絡められたまま、御堂怜央は彼女の柔らかな体温と、縋るような仕草をまともに受けてしまい――頭の中が真っ白になる。どう反応すればいいのか、まるで分からなかった。

こんなの、想定していた筋書きと違う。

計画どおりなら、今ごろ江島結奈は狼狽し、言い逃れもできず、皆の矢面に立たされているはずだった。なのに――どうして……どうして、こんなふうに……!

前川由紀は怒りで顔色を青黒くし、さらに追及しようと口を開きかけた。その瞬間、出入口のほうから低く、威圧感のある声が落ちてきた。

「……もういい」

空気が一斉に凍りつく。誰...

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