第87章 嫁がずに、一生おばあちゃんに付き添う

彼が欲しかったのは、彼女が「江島家のお嬢様」であるという肩書きだけ。――駒としての利用価値、それだけだ。

江島結奈は冷えきった壁にもたれ、爪を掌に深く食い込ませた。皮膚を破りそうなほど、ぎゅっと。

御堂怜央――。

その名が胸の奥を何度も轢き潰していく。かつて抱いていた罪悪感も、懐かしさも、感謝も、いまは冷たい嘲りと怒りに変わっていた。

結奈は大きく息を吸い、無理やり心を落ち着かせる。

いまは清算のときじゃない。さっきようやく死地を抜けたばかりで、まだ足場すら固まっていない。

御堂家、江島家、風見家……人を喰う獣どもは、まだ闇の中で牙を研いでいる。

時間が必要だ。力が必要だ。必要...

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