第108章

沈村碧人が目を向けた瞬間、彼もまた言葉を失った。

「……あいつらかよ!」

安田歌子はというと、ホテル備え付けのシルクのルームウェア姿で、赤ワインをゆったりと口にしている。

所作は優雅で、まとっている空気まで高貴だった。

一方の沈村遥は、全身が汗でべたつき、メイクも半分ほど崩れている。

まるで、きらびやかな世界を遠くから見上げるしかない哀れな道化。

遥は拳を握りしめ、歯を食いしばって歌子を睨みつけた。胸の奥で、嫉妬が狂ったように暴れている。

歌子のほうもこちらに気づき、ひらりと手を振って挨拶までしてきた。

沈村碧人はそれがまた腹立たしい。少し前までグループチャットで、歌子に「今...

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