第112章

沈村母は顔をこわばらせたまま、重たい溜息をついた。

「……あんた、どうやってお父さんに説明するつもり?」

沈村川人は一瞬、言葉を失う。

「……あいつ、本気なのか?」

「白石奥様、こっちの話も聞かずに電話切ったのよ! 本気じゃなかったら何なの!」

沈村川人の瞳に、かすかな動揺が走った。

本当は、白石リリと別れるつもりなんてなかった。ただ、また拗ねているだけだと思っていたのだ。

どうして、こんな取り返しのつかないところまで転がってしまったのか。

自分たちは家同士の縁談で、特別な感情なんてない――ずっとそう思い込んでいた。

けれど失いかけた瞬間、胸の奥から噴き上がったのは、濃いほ...

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