第68章

沈村景の反応は、沈村遥の胸にぱっくりと裂け目を作り、そこへ冷たい風がごうごうと吹き込んでくるみたいだった。

安田歌子は――この人の中で、そこまで大きい存在なの……?

底の見えない危機感が、遥の心の奥からむくむくとせり上がる。

「前のガソリンスタンドで、路肩に寄せて停めてくれ」

沈村景が運転手に指示する。頭を冷やしたかった。

車がスタンドに着くと、沈村景は振り返りもせずに降りた。

陸原吉弘はもう座っていられない。安田歌子の電話は繋がらず、今はただ、追いかけて誤解を解きたい一心だった。

複雑な顔で沈村遥を一度だけ見て、口を開きかけた、その時。

遥のほうが先に言った。

「吉弘さん...

ログインして続きを読む