第74章

安田歌子は辛抱強く説明した。

「うちが契約したいのはタレントです。いま売れてる俳優さんや歌手さんが、できたばかりの小さな会社に移籍してくれるはずがない。でも、知名度がそこそこの人たちは、実力が追いついてないケースも多い。獲っても戦力にならないんです」

「夏目天はデビュー当時、あの完璧すぎるスタイルで、初出演の作品から一気にファンを掴みました。あの件さえなければ、いま沈村事務所のトップにいるのは、間違いなく彼女だった」

温水仁菜は、初めて夏目天の芝居を見たときの衝撃を思い出す。忘れようがない。

どうして人は、あそこまで完璧に整っていられるのだろう。作り物みたいに精密な顔立ち。豊かで形の...

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