第76章

佐藤沢は傍らの女性社員を放り出すように離すと、若い子は大きく息を吐き、逃げるように走り去った。

佐藤沢が色と欲にまみれたうえに気性も荒い男だということは、社内じゃ誰もが知っている。少しでも見目のいい女なら、たいてい一度はちょっかいを出されていた。

それでも――人気だけはやたら高い。会社の人間は誰ひとり、正面から逆らえない。

夏目天はその場に突っ立ったまま、全身がこわばっていた。顔を上げることすらできない。

佐藤沢を目にした瞬間、過去の忌まわしい記憶が一気に押し寄せる。喉が締まり、勝手に震えが走った。

佐藤沢がこちらへ歩いてくる。夏目天の手にある解約の契約書を見つけると、鼻で笑った。...

ログインして続きを読む