第8章

沈村遥が丹念に作り込んできた表情も、仕草も……古崎拓人のそのひと言で、全部その場で固まった。

ここまで可哀想な感じを出してるのに! 古崎拓人、まったく情けを見せないの?

安田歌子は沈村遥の悔しそうな顔を見て、隣から皮肉を一つ添える。

「弱い人の武器って、涙しかないからね」

古崎拓人は安田歌子をちらりと見て、周囲をすり抜けるように歩き、彼女の隣の席へと腰を下ろした。

言葉を交わしたわけでもないのに、不思議と空気が噛み合っている。

さっきの「見応えのある芝居」を見て、安田歌子は終始冷静で、詰め方もきっちり、証拠も揃えていた。頭が切れて、ちゃんと力のある子だ。

一方の沈村遥は小細工が...

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