第84章

沈村深は壁にもたれたまま、ずるずると身体を滑らせ、ついには床に尻もちをついた。

脳裏に、あの日――安田歌子が家を出ていった光景が、勝手に蘇る。あれほど自信満々に、家族に言い切ったのだ。自分なら安田歌子を連れ戻し、きちんと頭を下げさせられる、と。

だが、現実は――

安田歌子は戻らない。それどころか、自分の評判だけが叩き潰された。

この屈辱が、受け入れられるはずもない。

「次男」

沈村川人が険しい顔で入ってくる。

「芸能事務所のほうの株主がな、全員……お前から説明を求めてる」

沈村深は、床に落ちた身体を引きずるようにして立ち上がった。

川人兄さんは事務所の社長で、自分は副社長。...

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