第87章

沈村遥は安田歌子に腕を引っ張られ、鏡の前まで連れてこられた。顔色は紙みたいに真っ白で、全身もひどくみすぼらしい。

安田歌子は沈村遥を押さえつけたまま、振り返って温水仁菜に言う。

「この子の髪、きれいに整えて」

温水仁菜はぽかんとした。

殴ったあとに、相手の身だしなみを直すなんて聞いたことがない。

けれど、沈村遥がここまで怯え切っているのを見るに、きっとこれも歌子なりの「いたぶり方」なのだろう。

仁菜は近づき、バッグから櫛とスプレーを取り出した。ぶるぶる震える沈村遥の髪を丁寧に梳かし、気を利かせてメイクまで軽く直す。最後に、スカートの皺もさっと整えてやった。

安田歌子が手を離した...

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