第91章

安田歌子に罵られて、沈村深は腹の底から不愉快だった。顔を上げ、沈村遥を見据える。

「台本、見せろ」

沈村遥は途端に目を泳がせる。

「前に、もう見たじゃない……?」

オリジナルの台本なら、確かに沈村深は読んでいる。そこにいたヒロインは、優しくて芯が強く、恋のためならすべてを捨てられるほど一途な少女だった。

読み終えた瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられて、思わず同情してしまったほどだ。

――遥ちゃんに、ぴったりだ。

そう思っていた。

だが、さっきの安田歌子の言葉が、嫌な疑念を連れてくる。

「……台本、変わったのか?」

沈村遥は視線を落とし、沈村深と目を合わせようとしない。曖昧...

ログインして続きを読む