第272章 誰かがあなたの彼氏を誘惑している

 山田真里が水を渡そうとするのを、北村辰はきっぱりと拒絶した。

「いや、結構だ。喉が渇いたら自分でやる」

 山田真里はばつが悪そうに、強張った愛想笑いを浮かべる。

「辰、私たちずいぶん疎遠になっちゃったのね。大学の頃はあんなに……」

 辰は、彼女が続けようとした言葉を遮った。

「大学の頃から俺は自立していたはずだが。水くらい自分で飲める」

 その場に気まずい空気が流れる。辰は会話を続ける気などさらさらないようで、真里はどうしていいか分からず立ち尽くすだけだ。

 中村美緒が咳払いをし、真里に下がるよう目配せした。美緒は内心、真里の浅はかさに呆れていた。佐藤愛がすぐそこに座っている...

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