第288章 誘惑

 金田沙美は酒の勢いを借りて、ひどく不機嫌そうに佐藤愛へ向かって愚痴をこぼし始めた。

「そうよ。当初は北村社長の圧力もあって、確かにあの女は公海上の船に追放されたわ」

「だけど、あの小娘、相当な性悪よ。藤井に何を吹き込んだのか知らないけど、女遊びなんてしなかったうちの堅物の亭主が、すっかりあの女に熱を上げちゃってるんだから」

「あの老いぼれ、頻繁に海外へ行っては、平沢寧々とよろしくやってるのよ」

「最近、部下から聞いたんだけど、その平沢寧々が忽然と姿を消したらしいの」

 金田沙美の言葉に、佐藤愛の表情が強張った。今まで彼女は、平沢寧々を自分の敵だとは認識していなかった。

 平沢寧...

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