第323章 俺が動く

「葉田静香、詩央は? 詩央は元気なの?」

 山田真里はそこでようやく思い出した。自分には娘がいたのだと。昨夜、眠れぬままに詩央の電話を鳴らしてみたことを。

 だが、あいにく詩央の携帯はずっと電源が切れたままだった。

 世話係の家政婦にもかけてみたが、こちらも同様に繋がらない。

 まあ、葉田静香がついているのだから大丈夫だろう──そう自分に言い聞かせ、安心しようとしていた。

 その名を耳にした瞬間、葉田静香は反射的に身を強ばらせた。まさか病院に置き去りにして逃げてきたなど、口が裂けても言えるはずがない。

 金蔓であるこの女を繋ぎ止めておくため、彼女は息をするように嘘を吐いた。

「...

ログインして続きを読む