第337章 見つめる者

 北村辰の声が耳元で響いてはじめて、佐藤愛の意識は現実へと引き戻された。

「おい、辰兄だぞ、どうした?」

 北村辰は手を伸ばし、パニックに陥りかけた佐藤愛の腕をぐっと掴んで動きを制した。その聞き慣れた低い声に、佐藤愛の情緒はようやく落ち着きを取り戻していく。

 寝室の明かりはついておらず、北村辰からは佐藤愛の表情は見えない。だが佐藤愛は、彼から漂う懐かしい匂いに包まれ、安堵の息をついた。

 彼女は北村辰の懐に飛び込み、その体にすがりつくように抱きついた。

「辰兄……やっと、帰ってきてくれたのね……」

「どうした? 一体何があった? なんでそんなに怯えてるんだ?」

 突然の取り乱...

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