第360章 北村辰の身代わり

 紀望は口元を緩め、意味ありげに言った。

「ちょっとした噂を耳にしてね……」

「へえ? どんな? まさか梨本家のビジネスに穴でも空いた?」

 竜崎玲が身を乗り出す。

 紀望は首を振った。

「違うよ。昨夜の話だ。北村奥様に招かれて北村家を訪ねた梨本雲が、北村辰社長を紹介されたらしいんだが……なんと、社長は彼女を完全無視したらしい」

「えっ? そんなことが?」

 竜崎玲は驚いた顔で佐藤愛を振り返り、目線で『知ってた?』と問いかけた。

 佐藤愛は呆れ気味に沈黙するしかない。まさか自分がその場にいて、一部始終を見ていたとは言えなかった。

「傑作なのはここからだ。彼女が親友に漏らした...

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