第432章 モラハラ

 中村美緒はいつものように、北村辰に向かって「辰」と声をかけた。

 北村辰は顔を上げ、極めて無愛想に言い放つ。

「中村社長、何度言わせるんですか? 会社では役職で呼んでいただきたい」

 中村美緒は、辰がこれほど露骨に不快感を示すとは思っていなかったらしい。

 彼女は一つ咳払いをすると、こう言った。

「辰。仕事の話じゃないの。家のことで話があるのよ」

 家の話だと聞き、辰は持っていたペンを置いた。彼は居住まいを正し、美緒を見据える。

「……いいでしょう。どうぞ」

 美緒は再び咳払いをしてから切り出した。

「辰、あなたのお母さんに会ったわ」

「すごく憔悴してた。お義父さんに家...

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