139.中田雪子が訪ねてくる

石原絵梨花は少し歩いたところで、ふいに足を止めた。振り返って、来た道を見返す。

病院一階のロビーは人の出入りが絶えず、ざわめきが渦を巻いている。絵梨花は視線を一巡させたが、ここにいるはずのない顔は見当たらない。

わずかに眉を寄せる。

数秒ののち、彼女は踵を返し、奥へと進んだ。

木村爺さんの病室に着いた頃には、医師の診察はちょうど終わったところだった。室内に残っているのは山口浩だけで、彼が木村爺さんの傍に控えている。

絵梨花の姿を認めるなり、木村爺さんは慌てたように手招きした。

「今日の試験はどうだった?」

絵梨花は近づいて腰を下ろすと、山口浩が剥いておいたバナナを受け取り、その...

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