150.自分で這いずって戻ってくる

けれど、ほんの一目見ただけで、石原絵梨花は眉間がぴくりと跳ねた。自分の見間違いだと思った。

なぜなら、入口に立っていた相手が――石原絵梨花の予想していなかった人物だったからだ。

襖が押し開けられると、男はまぶたを持ち上げるように顔を上げた。露わになったのは、色の薄い、冷えきった無表情。氷を一枚貼りつけたみたいに冷たく、周囲の空気まで凍らせるようだった。

石原絵梨花の驚きに揺れる視線と、真正面からぶつかった。

それから彼は身体を動かした。個室に入ろうとした――その瞬間。

石原絵梨花は反射で立ち上がり、個室の扉を「バンッ!」と勢いよく閉めた。

扉の内と外、同時に胸の奥が「ぎくっ」と鳴...

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