162.君に会いたい

ホテルを出たあと、石原絵梨花はタクシーを拾わなかった。あてもなく歩道の端を歩きながら、自分がどこへ向かいたいのかさえ分からない。

ずっと、もう気にしていないと思っていた。

けれど今日、口にして初めて気づく。もう一度それを持ち出した瞬間、自分が「何も感じていない」わけじゃない、と。

石原幸雄も石原聡美も石原七緒も、石原絵梨花が戻るべきじゃないと思っている。――そして何より、石原絵梨花自身が、石原家に戻りたくなかった。

戻って、何をする?

両親の見捨てた視線と責め言葉を浴びるのか。妹の敵意と、飽きるほど繰り返される挑発を受け止めるのか。

石原絵梨花は、石原幸雄と石原聡美が自分をどう評...

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