190.絵梨花さんはなかなか食えない人だね

石原絵梨花は顔をぐいっと拭い、観念したように言った。

「ほんとにトイレ行きたいだけ。今回は私ひとりで行く。由紀は着替えて、変装してから行って」

富山由紀は真面目にこくりと頷く。

石原絵梨花はため息をつき、富山由紀の横をすり抜けると、やけに落ち着いた足取りでそのまま扉を開けて出ていった。しかも、律儀に扉まで閉めて。

個室に残ったのは、富山由紀ひとり。

富山由紀はむしゃくしゃして頭をがしがし掻く。

(偶然だ、偶然! 絶対に偶然! 私の運が悪いとかじゃない!)

そう思い込むように、富山由紀も小さく息を吐いた。

――が。

次の瞬間、背後で「ドンッ!」と鈍い衝撃音。

反射的に振り返...

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