043.意味がわからないが、ひどく衝撃を受けた

渡部岳人はどこか上の空のまま、石原絵梨花に言った。

「石原君、ピアノはここに置いておきます。特に用がなければ、僕はこれで失礼します」

石原絵梨花は小さくうなずき、丁寧に頭を下げる。

「渡部先生、わざわざありがとうございました」

「いえいえ、とんでもない!」

渡部岳人はびくっとして、慌てて両手を振った。

冗談じゃない。自分の金を使ったわけでもないのだ。校長に頼まれて、ちょっと運んだだけ。

それでも――この一件で、渡部岳人が石原絵梨花を見る目は、さっきよりずっと複雑になっていた。

「事情がある子」だとは思っていた。だが、ここまでとは。正直、予想の外だ。

渡部岳人は元々、気の利い...

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