062.まあ、生かさず殺さずといったところか

石原聡美はまだ怒りが収まらず、石原幸雄の言葉に乗っかるように言った。

「そうよ! 石原絵梨花が木村爺さんに頼まなくたって、うちはうちで乗り切れたんだから!」

その一言で、石原幸雄の顔色はようやく少し和らいだ。

けれど、石原七緒だけは同じようには考えていなかった。

七緒は時々、妙に頭が切れる。十八年間一緒に暮らしてきたぶん、父のことは誰より分かっている。石原幸雄に本当に“切り抜ける力”があるのかどうか――それくらい、七緒には見えていた。

本当に手があるなら、そもそも石原絵梨花に頼ろうなんて発想にはならない。

七緒の瞳の奥に、気づかれない程度の不安がすっと差す。

彼女は誰よりも、石...

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