077.木村おじいさんが帰ってくる

松岡友希は言い終えると、遠慮もなく石原絵梨花をまっすぐ見つめた。

もう夕暮れだ。斜めに差し込む光が、さらさらと店内へ落ちてくる。光はこの店を、そして松岡友希の輪郭までも、ぼんやりと滲ませた。

石原絵梨花は、ふと夢を見ているような気分になった。

けれど、この瞬間だけは――本当に、さっきまでの怒りが少し引いた気がした。

「松岡友希」

石原絵梨花が名を呼ぶ。

松岡友希は瞳の奥で光を揺らし、長い眉をわずかに上げて、落ち着いた声で応じた。

「ん?」

石原絵梨花は言った。

「お腹すいた。前に食べた、あの麺が食べたい」

松岡友希は一瞬だけ目を瞬かせ、それから小さく笑う。

「……いいよ...

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