第3章

石と金属が擦れ合う軋みを響かせ、鉄の扉が開いた。

私はさらに隅へと身を寄せた。心臓が激しく脈打つ。戸口を埋め尽くす長身の影。背後にある廊下からの蝋燭の光が、そのシルエットをくっきりと浮かび上がらせていた。広い肩幅、完璧に仕立てられたスーツ、そして、その場の空気そのものを重くさせるような、抑制された危険なオーラ。

やがて、男が光の中へと足を踏み入れた。

黒川家の跡継ぎ、黒川直樹。

だが、私の血を凍りつかせたのはその瞳だった。狼を思わせる琥珀色の双眸には、怒り、苦痛、渇望、そして、もしそれが救いようもなく歪んでさえいなければ愛と呼べたかもしれない何かが、複雑な嵐となって渦巻いていた。

彼は赤ワインのボトルとクリスタルのグラスを二つ携えていた。まるで、これがどんな心理的拷問であれ、それを行うためではなく、文明的な会話を交わしに来たかのように。

「五年ぶりだな、絵里」彼の声は深く、教養が感じられた。一語一語が鋼を絹で包んだかのように響く、独特の三角島訛り。「まだ俺のことを、他人を見るような目で見るんだな」

私は鎖をじゃらりと鳴らしながら、石の壁に背中がぶつかるまで後ずさった。「絵里って呼ばないで! どうして私はここにいるの?」

苦い笑みが彼の完璧な唇を歪めた。「俺は君の夫だ、絵里。由美子の父親でもある」彼は私の手の届かないすぐ外にある小さな木製のテーブルにワインボトルを置いた。「もっとも、君はそのどちらの事実も認めようとしないが」

「夫?」その言葉は、喉から絞り出すような笑い声となって漏れた。「気でも狂ってるの。悟が私の夫よ。彼と結婚したばかり......」

「悟」直樹の声は氷のように冷たくなった。見せかけの紳士的な態度は跡形もなく消え去る。「まだあの男のことを考えているのか」

彼は振り付けられたかのように優雅な動きで、両方のグラスにワインを注いだ。豊かな赤色の液体が蝋燭の光を受け、液状のガーネットのようにきらめく。

「教えてくれ、絵里」彼は先に運び込んでいた椅子に腰を下ろしながら続けた。「俺たちの結婚式を覚えているか? 大港市の外れにあった、オリーブの木が咲き誇る小さなチャペルだ。君は祖母のドレスを着ていた。背中に真珠のボタンが並んだ、アイボリーシルクの」

私は混乱と怒りを胸の中で戦わせながら、彼を睨みつけた。「そんな……そんなはずない。私が悟と結婚したのは大聖堂よ。何百人もの招待客がいて、白い薔薇が一面に……」

直樹の瞳が、本物の痛みのように見えるもので和らいだ。「あの日の君は、息をのむほど美しかった。誓いの言葉を口にするとき、君の手は震えていたが、声は揺るぎなかった。力強かった。血と、誉れと、復讐と、そのすべてを通して、俺のそばに立つと誓ったんだ」

「やめて!」言葉が喉を突き破ってほとばしる。「それは私の記憶じゃない! あなたに何も誓ったりしていない!」

だが、そう口にしながらも、意識の片隅で何かが明滅した。アイボリーシルクの閃き……海の風に揺れるオリーブの木……私の指に指輪を滑り込ませる、力強い手……。

『違う。違う、そんなはずない。私が結婚したのは悟だ。大聖堂も、音楽も、彼の優しい笑顔も、全部覚えている……』

直樹は身を乗り出し、手負いの獲物を観察する捕食者のような鋭さで私の顔を覗き込んだ。「最初のキスを覚えているか? 古い教会の裏で、夕方のミサの後だった。君は十六歳で、叔母さんが作ってくれた青いドレスを着ていた。君からは、砂糖と反抗の味がした」

「私のファーストキスは悟よ」私は囁いたが、その声には毒のように疑念が忍び寄っていた。「彼の家の裏庭で……」

私は激しく頭を振った。「噓つき。全部嘘よ。悟は私を愛してる。彼が誰かに私を傷つけさせるわけがない。こんな動物みたいに閉じ込められるのを、彼が許すはずない!」

直樹の注意深く保たれていた仮面が滑り落ち始めた。顎がこわばり、その琥珀色の瞳に殺意にも似た光が閃く。

「悟だと?」彼は椅子が石と擦れる音を立てて、唐突に立ち上がった。「高橋悟が、お前のお前ことなど気にかけているとでも?」

「彼は私の夫よ!」私の声は絶望のあまりひび割れた。「私を愛してる! 今頃きっと私を探していて、見つけたら......」

「見つけたら何だ?」直樹の笑い声は、砕けたガラスのように鋭かった。「お前を救い出すとでも? おとぎ話みたいなハッピーエンドに連れ去ってくれるとでも言うのか?」

「お前が大事にしている悟について知りたいか?」彼の声は、死を予感させる囁きへと変わった。「なぜ奴がお前を迎えに来ないのか、知りたいか?」

「彼は来るわ」私は言い張ったが、恐怖が氷水のように背筋を這い上がってくる。「悟は絶対に私を見捨てない。私を愛してる......」

「高橋悟は死んだんだよ!」直樹は咆哮した。その声は銃声のように石の壁に反響した。

世界がぐらりと傾き、一瞬、息ができなくなった。

「嘘……」その言葉は、かろうじて聞き取れるほどの囁きだった。「そんな……彼が死ぬなんて……」

直樹の表情は野蛮で、見せかけの優しさは完全に捨て去られていた。「五年前に死んだんだ、俺が奴の胸に三発弾丸を撃ち込み、うちの屋敷の裏にあるオリーブ園で血を流して死んでいくのを、この目で見た」

「嘘よ」だが、私の声にはもう力がなかった。「彼は死んでない。私たちは結婚したばかりなのに……」

部屋がぐるぐると回る。何もかもが理解できない。頭の中の記憶、梨乃が見せてくれた写真、由美子が私をママと呼んだこと、すべてが間違っていて、悪夢のように捻じ曲がっていた。

「覚えてる……」目の奥で痛みが爆発し、私は頭を抱えた。「大聖堂……悟の笑顔……私たちのファーストダンス……」

「それは幻だ」直樹は、捕食者のような優雅さで再び椅子に腰を下ろした。「真実からお前を守るための、お前の心の防衛機制だ。お前は奴を愛していた、それは確かだ。だが奴は、お前を、お前のいるべき場所から、お前の家族から、奪い去ろうとした」

「何の家族よ?」頭蓋骨を突き刺す苦痛の中で、私は喘いだ。

「黒川家だ。お前を育て、守り、すべてを与えた家族」彼の声は再び優しくなったが、それがかえって恐ろしく感じられた。「お前がロミオとの空想のために裏切った家族だ」

さらなるイメージが頭の中を駆け巡った――私がしがみついていた美しい記憶ではなく、もっと暗いもの。悟が私の手首を強く掴んでいる。誰かと、押し殺した怒りの声で言い争っている。大理石の階段に付着した血。止まらない絶叫。

「わからない……」涙が今や私の顔を伝って流れていた。「もし悟が死んでいるなら、どうして私はこんなにはっきりと彼を覚えているの? どうして、ついさっき彼を失ったように感じるの?」

直樹の表情が、憐れみともとれる何かで和らいだ。「お前がこの五年間、自分自身の頭の中で迷子になっていたからだ、カーラ。自分の家族ではなく、敵と結婚した世界に生きていたからだ」

彼は立ち上がって鉄格子のそばまで歩いてきた。彼のコロンの香りがするほど近い、高価で、男性的で、そして、どうしようもなく馴染みのある香り。

「明日」彼は静かに言った。「奴の墓に連れて行ってやる」

「お願い……」嗚咽のせいで、私はほとんど言葉を紡げなかった。「お願い、無理よ……これは現実じゃない……」

直樹は鉄格子を通して手を伸ばし、その指先が私の頬をかろうじて掠めた。ほんの一瞬、彼の感触は優しく、ほとんど愛情のこもったものに感じられた。

「現実だ、絵里。すべてがな。結婚も、由美子も、お前が狂気の中で失ったこの五年間も」彼の声はビロードのように柔らかく、冬のように残酷だった。「高橋悟は土の中で朽ち果て、お前は、お前が常にいるべき場所にいる」

彼はワイングラスを手に取り、一気に呷ってから、意図的な正確さでそれを置いた。

「良い夢を、妻よ」

彼の背後で、鉄の扉がガチャンと閉まった。

私は息の詰まるような静寂の中に座り、彼が残していったワインを見つめていた。豊かな赤色の液体は蝋燭の光の中で血のように見え、突然、異質でありながら馴染み深くもある記憶に溺れそうになった。

アイボリーシルクのドレスを着てチャペルに立っている……

琥珀色の瞳をした赤ん坊を抱いている……

直樹の妻として何年も暮らしていた、その前の……

何の前? 私が正気を失う前? 私が本当の人生を忘れ、敵と結婚するという幻想を創り出す前?

『でも、どの記憶が本当なの? 悟との美しい記憶? それとも、直樹とのこの恐ろしい記憶?』

私は両手でこめかみを押さえ、記憶の断片が内側から私を切り裂くのを止めようとした。だが、真実は、心の中で増殖する癌のように形を成し始めていた。

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