第6章

直樹が蝋燭の光の中へ足を踏み入れた。高価なスーツ姿ではなく、シンプルなジーンズと白いシャツを身につけた彼は、どことなく柔らかな印象だった。

「やあ、絵里」彼は静かに言った。「家に帰る準備はできたかい?」

私は無理に彼の視線を受け止め、不確かな希望を表情に浮かべた。「家に……?」

彼は私の傍らに跪き、驚くほど優しい手つきで足首の枷を外した。「本当の僕たちの家さ。上の階の、君のいるべき場所に」

金属が床に落ち、ガチャリと音を立てた。五年ぶりに、私はこの鎖から解放されたのだ。

「ほとんど覚えていないの」私は役を演じながら囁いた。「何もかも、霧がかかったみたいで……」

「それが普...

ログインして続きを読む