第5章

真希視点

最初の一枚に、私は息を呑んだ。

ギャラリーにいる私。カメラに横顔を向け、抽象画をじっと見つめている。窓から差し込む陽光が、私の顔を温かい光で照らし出していた。誰かに撮られているなんて、まったく気づかなかった。

「結婚した最初の日だ」潤が静かに言った。「君がギャラリーの再オープンの準備をしてた時。私は戸口に立って、君が完璧な光を探してあの絵を調整しているのを、二十分も見てたんだ」

次の写真へスワイプする。カフェだ。ノートパソコンに向かって前かがみになり、眉をひそめ、カップを握りしめている私。

「結婚して三週間。君はキュレーションの企画書で徹夜してた。コーヒーを買ってく...

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