第5章

 S病院の集中治療室。

 目の重度な感染症は、私の視力を奪っただけにとどまらなかった。それは猛烈な高熱を引き起こし、私の身体を多臓器不全へと追い込んでいたのだ。

 果てしない暗闇の中を意識が浮かんでは沈むことを繰り返していると、やがて廊下の奥から慌ただしい足音が響いてきた。

 悠真だ。光を失ってから五年が経とうとも、彼の足音なら瞬時に聞き分けることができた。

「説明してくれ、里奈!」分厚いガラス扉越しに、信じがたいといった様子の、鋭い悠真の声が響いた。

「廊下であいつの友達に呼び止められたんだ。絵を売った金で何年間も俺を支え続けてくれたのも、角膜を提供しようとしていたのも、お前じゃ...

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