第8章

 目を覚まして最初に感じたのは、鼻をつくような消毒液の鋭い匂いだった。

 心電図モニターの規則的で絶え間ない電子音が、私に一つの事実を突きつけていた。私は生きていて、悠真は死んだのだと。

「ゆっくりでいいですよ、葵さん。最初は光が少し眩しく感じるかもしれません」

 私の両目を覆う分厚い包帯をゆっくりと解きながら、高橋さんは優しい声で言った。

 私は反射的に瞬きをした。

 ぼやけていた色の塊が、少しずつ一つにまとまっていく。輪郭がはっきりと形を成し始め、やがて世界が鮮明な景色となって結像した。

 ゆっくりと、病室の窓へと顔を向ける。

 ガラス越しに見える穏やかで青い海には、関西の...

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