第104章

「簡単よ」

その一言を口にした瞬間、吉崎直子は確信した。自分は賭けに勝ったのだ、と。

彼女は悟られない程度に唇の端をつり上げる。

「分かっています。今の状況で、あなたが決定を覆すのは難しい。上への説明も、きっと厄介でしょうね」

「だからこちらから、補足の協業案を、より詳細にまとめて出します。林原グループが本件に追加で投下するリソース、そして盛華に生まれる付加価値――そこまで全部、書面に落とし込みます」

「それを持って取締役会へ行くなり……あのお方へ説明するなりしてください。あなたの立場は守れる。こちらも協業を続けられる。どうです?」

オフィスに、長い静寂が落ちた。

やがて佐藤明...

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