第111章

夜が更けても、林原グループ本社ビルの灯りは落ちなかった。ガラス張りの窓の向こうで、いくつもの人影が忙しなく行き来している。

吉崎直子の執務室は、デスクライトが一つ灯っているだけ。黄ばんだ光が、机上に積み上がった書類の山を照らしていた。

彼女は村田から届いた資料を、冷静に、しかし執念深いほどの集中でめくっていく。眉間には深い皺。

五時間。

吉崎直子は一度も席を立たず、そこに並ぶ名前も数字も、すべて頭の中で洗い直した。

最後のページを読み終えた瞬間、彼女はばさりとファイルを閉じる。

椅子の背にもたれ、身体を沈めた。

――見えてきた。

事故そのものは単純だ。粗悪な安全金具。それが直...

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