第112章

だが次の瞬間、男は首をわずかに傾け、ふわりとそれをかわした。

同時に、稲妻みたいに伸びた手が彼女の足首を掴む。

動きを封じられ、吉崎直子の表情がわずかに曇った。

それでも慌てない。反射的に、もう片方の脚を鋭く振り抜く。

男が避けた、その一瞬。

直子は勢いを利用して身体を反転させ、片手で床を支えたまま、両脚を鋏のように絡めて男の首を狙った。

狭いオフィスに、ぶんっと拳風が唸る。影が交差し、息が詰まるほどの近距離戦。

再び組み合った刹那、直子は隙を掴み、右手を伸ばして男の仮面へ――。

男は身をひねってかわし、左手で彼女の手首を扣える。右手は腰へ回り、押さえ込もうとした。

――さ...

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