第117章

そのとき、執事が慌ただしく客間へ入ってきた。羽島の老当主の耳元へ身を寄せ、声を落として告げる。

『お爺さま、吉崎家の方がお見えです。喜太郎若様と吉崎由紀小姐の件で、お目にかかりたいと』

その言葉を聞いた瞬間、羽島喜太郎の胸がずしりと沈んだ。

羽島のお爺さんはしばし黙し、深い眼差しを落とす。

長年修羅場をくぐってきた身だ。相手が何をしに来たかなど、分からないはずがない。

だが今、道理があるのは向こうではない。だからこそ、頭を低くしてでも来たのだ。

『通せ』

執事は一礼し、足早に去っていく。客間の空気は、みるみる氷点下まで冷え込んだ。

ほどなくして、吉崎広峰が弁護士を引き連れ、ふ...

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