第119章

帰りの車内は、異様なほど静かだった。

吉崎直子は窓の外へ視線を投げ、流れていく街並みを追うだけで、口を開こうとしない。

隣には林原澄子。娘の横顔を何度も横目で確かめながらも、あえて何も言わなかった。自分の「張り切り」が、また直子を困らせるのが怖いのだろう。

運転席の村田は林原家に長く仕える運転手だ。重たい空気を察し、わざと明るい声を作る。

「お嬢様がお戻りになって、奥様がいちばんお喜びです。最近もずっと、昔お嬢様にご用意していたお部屋を、もう一度整え直そうって――」

その言葉に、直子の目がわずかに揺れた。

窓ガラスの反射越しに、澄子が村田をきっと睨みつけるのが見える。余計なことを...

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