第120章

生死の境目、その刹那――

『ヒュッ!』

鋭い風切り音が闇を裂いた。鉈を握っていた男が、突如として悲鳴を上げ、手首を押さえてうずくまる。

吉崎直子が目を凝らすと、男の手首には銀色のカフリンクスが深々と食い込んでいた。血が肘のほうへ伝い、ぽた、ぽた、と落ちている。

直子が状況を飲み込むより早く、今度は鈍い打撃音が立て続けに響いた。

さっきまで直子を囲んでいた連中が、見えない何かに殴り飛ばされたみたいに、次々と悲鳴を上げて宙を舞う。壁に叩きつけられ、床へ転がり、動けなくなった。

次の瞬間。

黒塗りのセダンが数台、幽霊みたいに音もなく現れ、ききぃ、と寸前で停まった。ドアが一斉に開き、黒...

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