第121章

早坂が駆け寄るより早く、羽島浩介の氷みたいな視線が突き刺さり、彼をその場で足止めした。

『いい。俺がやる』

そう言うなり、浩介は医師の手から救急箱を受け取る。

周囲の呆然とした視線など意に介さず、半ば支え、半ば抱きかかえるようにして彼女を連れ、二階のリビングへ向かった。

部屋には暖色の灯りがとろりと落ち、調度品の輪郭に淡い光の縁取りを作っている。

羽島浩介は吉崎直子を柔らかなソファへ座らせると、慎重にスーツの上着をめくり、傷ついた腕を露わにした。

一時間以上も手当てが遅れたせいか、腕の裂傷はますます生々しく、見る者の喉を締めつける。

その光景に、浩介の呼吸がふっと止まった。

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