第129章

夜の帳が下り、街の灯がひとつ、またひとつとともり始める。

アシスタントが最後のサイン済み書類を抱えてオフィスを出ていった瞬間、吉崎直子はようやく肩の力を抜いた。

椅子に半身を預け、目を閉じて息を整える。床まで届く窓の向こうのネオンが滲むように差し込み、磨かれたデスクの天板に落ち、同じ光が彼女の眉間にも反射して――疲労の影をくっきり浮かび上がらせた。

脳裏を占めているのは、さっきまでの羽島喜太郎との対峙だ。

正直、吉崎直子はあの男の脅しなど、端から相手にしていない。

陰で小細工を弄するだけの三下が、何をしたところでたかが知れている。

ただ、苛立ちが残る要素が二つあった。

行方の掴...

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