第133章

ほんの2、3秒の出来事だった。だが、その場にいた全員の背中に、冷たい汗が一気に噴き出す。

仕掛けた当人はすでに「死神カーブ」を抜けていた。バックミラー越しに、黒いハマーが崖へ吸い込まれず踏みとどまったのを見て、目に一瞬だけ信じがたい驚愕が走る。

――が、次の瞬間には、こみ上げる興奮がそれを塗り潰した。

あいつは終わりだ。

さっきの一撃。そこらの女なら、まず耐えられない。

プロのレーサーだって、運よく死なずに済んでもトラウマが残る。ひどければ引退して、二度とハンドルを握れなくなるかもしれない。

そう思うと、胸の奥が愉快で満ちていった。

……しかし、その愉悦が着地する前に。

背後...

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