第135章

すぐに、吉崎直子は深く息を吸い込むと一歩下がり、監視カメラの死角を慎重に選んで、脇から回り込んだ。

車へ戻ってようやく肩の力が抜けたものの、胸の鼓動はまだ荒いまま。

さっき耳にした話を思い出し、瞳の奥がすっと冷えていく。

――ここは危険すぎる。ひとりじゃ、奥まで入り込めない。

そう結論づけると、直子はスマホを取り出した。セメント工場の素性を洗ってもらうため、ある人物に連絡を入れようとしたのだ。

だが、メッセージを送るより先に、画面にひとつの名前が浮かび上がる。

発信者を認識した瞬間、直子の心臓がどくん、と跳ねた。

こんな時間に――どうして羽島浩介が?

直子は唇を噛み、胸の奥に...

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