第142章

男はそう言いながら作業台の前へ回り、主制御スイッチを押し込んだ。目の前の機器が一斉に灯り、ブレスライトがちかちかと脈打つ。無機質な地下室に、妙に未来めいた気配が満ちていく。

『それに、ここのハードは全部ミリタリーグレードだ。処理速度は、君が何をやるにも十分』

『あと、必要なデータはもう手配して、メイン機のサンドボックスに転送させてある』

羽島浩介の言葉を聞き終えると、吉崎直子は小さく頷いた。余計なやり取りはしない。椅子を引いて腰を下ろす。

すらりとした十指が、刻印ひとつないメカニカルキーボードへそっと置かれた。

次の瞬間――指が疾風のように踊り出す。

カタカタカタ、と乾いた打鍵音...

ログインして続きを読む