第146章

翌朝。午前。

吉崎直子は部屋でY市の地図を広げ、リチャードが潜んでいそうな場所を洗い出そうとしていた。ペン先でいくつかの通りをなぞった、そのとき――。

コン、コン。

控えめなノックが扉を叩く。

『お嬢様。吉崎由紀さんがお見えです。どうしても、お会いしたいと』

その一言で、直子の眉間にすっと皺が寄った。瞳の奥に、露骨な苛立ちが走る。

『追い返して。顔も見たくない』

『……すでに、そのようにお伝えしました』執事は困りきった表情で言葉を選ぶ。『ですが外で大騒ぎをしておりまして。お嬢様に会えないなら、羽島さんがお戻りになるまで待つ、と……』

警備が強引に排除できないのは、由紀がいま「...

ログインして続きを読む