第149章

三十分後、黒のベントレーが、威容を誇る羽島グループ本社ビルの車寄せに滑り込んだ。

吉崎直子はドアを押し開けて降りる。タイトなビジネススーツが、彼女の冷ややかで近寄りがたい美貌をいっそう際立たせていた。

周囲の通行人が向ける探るような視線も、噂好きの好奇心も、彼女はまるで見えていないかのように切り捨てる。まっすぐ、金色に輝く一階ロビーへ足を踏み入れた。

ロビーには羽島の社員が行き交っている。彼女の顔を認めた瞬間、あちこちで驚きが走った。

『見て、あれ……トレンドの騒動の女じゃない?』

『本人だ。なんでここに?』

『羽島様か、羽島喜太郎でしょ。だってあの二人と関係がどうとか、散々言わ...

ログインして続きを読む